搾乳は、ネット上には正確そうに見えるスケジュールが山ほどあるのに、医学的な情報源が示す数字はごくわずか、という話題です。これは偶然ではありません。搾乳の頻度や時間は、何のために搾乳するのか(仕事復帰、冷凍ストックづくり、うまく吸えない赤ちゃんへの授乳、胸の張りの緩和)、赤ちゃんの月齢、そしてあなたの体によって変わるからです。このガイドでは、米国小児科学会(AAP)が実際に述べていることとそれ以外を切り分け、1日の流れに合うスケジュールの組み立て方と、うまくいっているかを確かめるために記録しておきたい項目を紹介します。
このガイドは、小児科医や母乳育児の専門家(ラクテーション・コンサルタント)の助言に代わるものではありません。とくに赤ちゃんが早産だった場合、体重の増えがゆるやかな場合、授乳に困難がある場合は、状況に合わせた目標を立ててもらえます。
搾乳の頻度についてAAPが述べていること
AAPの指針は、計算式のようなものをあえて示していません。
- 仕事中の搾乳については、乳汁の流れが早く止まったとしても1回につき少なくとも10分間搾乳するようにとし、搾乳のために1日に1~3回ほど短く席を外すことに触れています。
- 自宅では、少なくとも2~3時間おきに授乳することを勧めています。赤ちゃんが夜通し眠る場合は、自分の就寝時間に赤ちゃんを起こして追加で授乳することを検討するよう提案しています。週末は母乳だけで授乳し、赤ちゃんが欲しがるそぶりを見せたらそのつど応えるよう提案しています。
- 母乳の出が少ない場合のページでは、授乳や搾乳の頻度について具体的な数字は示していません。小児科医に赤ちゃんの成長を確認してもらうよう勧めており、定期的に搾乳するなら、サイズの合ったフランジ(乳房に当てる部分)と状態のよいバルブを備えたダブルの電動搾乳器が最適だとしています。
AAPが、どの月齢についても1日の搾乳回数を具体的に示した記述は見つかりませんでした。公式の数字であるかのように回数を載せているウェブサイトには注意してください。最も確実なのは、赤ちゃんが普段することに搾乳を合わせる方法です。日中に3時間おきに授乳しているなら、離れている間も同じくらいの間隔で搾乳すると、同じリズムを保ちやすくなります。
よくある3つの場面と計画の立て方
1. 仕事中に搾乳する
いちばんわかりやすいルールは、赤ちゃんが飲むはずの時間に搾乳することです。通常の勤務時間のあいだ離れているなら、午前に1回、昼ごろに1回、午後に1回というのが一般的です。これは、1日に1~3回短く席を外すというAAPの記述とも合っていますが、実際の回数は離れている時間の長さと赤ちゃんの月齢によって変わります。準備、搾乳(少なくとも10分)、ラベル貼りと保存、パーツの洗浄の時間も見込んでください。復帰の前に、スケジュールと個室の利用について職場と合意しておきましょう。AAPは、母乳を運んで保管するためのクーラーバッグを用意することも勧めています。
搾乳の時間をカレンダーに繰り返しの会議として入れている人も多くいます。同僚がその時間を尊重してくれやすくなり、自分も飛ばしにくくなります。
2. 直接授乳と並行してストックをつくる
赤ちゃんと家にいるなら、赤ちゃんが最高の搾乳器です。多くの人は、授乳の代わりではなく、授乳のあとや授乳と授乳のあいだに搾乳または手搾りをしています。AAPの手搾りのページでは、普通の授乳中に射乳反射(母乳が出始める反応)が起きてから試すか、授乳した直後にもう一方の乳房から試すことを提案しています。朝がいちばんやりやすいという人もいます。慣れるにつれて量は増える傾向があり、AAPによると、1回約1オンスほどから、哺乳びん1本分以上に増えることもあります。最初は、両方の乳房の張りが十分に和らぐまで最大30分ほどかかることがあります。
3. 赤ちゃんが直接飲めないために搾乳する
赤ちゃんが早産だった、入院している、うまく吸えないといった場合は、病院のチームが具体的なスケジュールを示してくれるのが普通です。一般的な記事ではなく、そちらに従ってください。AAPには、早産の赤ちゃんのための搾乳に関する専用ページもあります。
哺乳びんの始め方
仕事に戻るために搾乳するなら、赤ちゃんには哺乳びんで飲んでもらう必要があります。AAPは、搾乳のやり方を身につけたあとに始めるとしており、特定の月齢や週数は示していません。通常の授乳から1~2時間後、赤ちゃんが起きていてあまりお腹がすいていないときに、母乳を約半オンス与えてみることを提案しています。10分以上たっても飲まないときはやめて、あとでもう一度試します。哺乳びんやカップは、うまくいかないと決める前に、それぞれ数日間試してください。また、外出が予想される時間帯に、ときどき哺乳びんかカップで1回分すべてを与えると、習慣づくりに役立ちます。
搾乳のときに記録しておくこと
搾乳の記録が役立つ理由は3つあります。搾乳量が安定しているかがわかること、冷蔵庫と冷凍庫にどれだけの母乳がいつのものかがわかること、そして母乳の量に不安があるときに小児科医やラクテーション・コンサルタントに実際のデータを見せられることです。記録は気軽に続けられるものにしましょう。1回ごとに、次の項目を書きます。
- 開始時刻と所要時間(分)。計画どおりに搾乳できているかがわかります。
- 左右それぞれの量、または合計。オンスかミリリットルか、使いやすいほうの単位で、毎回同じ単位で書きます。
- 使用期限(「いつまでに使うか」)と行き先。冷蔵、冷凍、またはそのまま授乳のどれかを書きます。AAPの助言どおり、容器にはすべて搾乳した日付を書き、保育施設に預ける場合は子どもの名前も書きましょう。
- メモ:搾乳器の設定、フランジのサイズ、胸の張りの感じ、搾乳を飛ばしたこと、ストレスや体調不良など。
| 日付と時刻 | 分 | 左(ml/oz) | 右(ml/oz) | 保存 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 冷蔵 / 冷凍 / そのまま授乳 | |||||
| 冷蔵 / 冷凍 / そのまま授乳 | |||||
| 冷蔵 / 冷凍 / そのまま授乳 | |||||
| 冷蔵 / 冷凍 / そのまま授乳 |
1回の搾乳量だけで結論を出さないでください。搾乳量は1日のうちでも変わりますし、AAP自身の手搾りのページも、朝のほうがよく出ることが多いと述べています。1日または1週間の合計で見て、ほかの人の数字ではなく、赤ちゃんの体重とおむつの枚数と比べましょう。赤ちゃん側の様子については、印刷できる授乳・睡眠記録表で紹介しています。
AndroidのベビートラッカーであるNightfeedでは、哺乳びんでの授乳を量つきで記録できるので、「赤ちゃんがどれだけ飲んだか」の半分をカバーできます。直接授乳には授乳タイマーが使えます。詳しくはNightfeedのトップページをご覧ください。
安全な保存:AAPの数字
母乳の冷凍・冷蔵保存に関するAAPのページでは、次の目安が示されています。ご自身の状況に合った指針に必ず従ってください。とくに早産の赤ちゃんや病気の赤ちゃんの場合は、病院の規則がより厳しくなります。
| 保存場所 | 条件 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 室温 | 25℃(77°F)まで | 4時間までが最適。非常に清潔に搾乳した場合は6~8時間も可能ですが、できるだけ早く冷やしてください |
| 冷蔵庫 | 奥の、4℃(39°F)以下の場所 | 4日までが最適 |
| 冷蔵庫内の、扉が別になった冷凍室 | -18℃(0°F) | 9か月まで |
| チェスト型・業務用の大型冷凍庫 | -20℃(-4°F) | 12か月まで |
- 1回分の量:無駄を防ぐため、少量ずつ、できれば2~4オンスずつ保存します。
- 冷凍するタイミング:48~72時間以内に使わない母乳は冷凍します。冷凍庫の扉側ではなく奥に置き、母乳は凍ると膨らむので容器の上部に余裕を残してください。
- 解凍:冷蔵庫に移して一晩かけるか、流水のぬるま湯をあてるか、ぬるま湯を入れた容器に浸けます。赤ちゃんがやけどをするおそれがあるため、母乳を電子レンジで温めてはいけません。解凍した母乳は冷蔵庫で保管し、24時間以内に使うのが最適ですが、48~72時間以内なら使うことができます。
- 哺乳びんに残った母乳:2時間以内に使うか、すぐに冷蔵した場合は次の授乳で使います。
「いつ、どこに保存したか」の列がある記録なら、日付がすでに書かれているので、古いものから使うというルールを守りやすくなります。
搾乳器のお手入れ
母乳に触れる搾乳器のパーツは、きちんと洗う必要があります。AAPの指針を手短にまとめます。
- 使う前に、石けんと水で20秒かけて手を洗い、搾乳する場所の表面を拭きます。
- 使い終わったら、母乳にふたをしてラベルを貼り、セット(フランジ、バルブ、メンブレン、コネクター、ボトル)を分解して、母乳や乳房に触れたパーツをできるだけ早く流水ですすぎます。
- 洗うときは、シンクではなく、乳児の授乳用品専用のたらいで、専用のブラシを使って手洗いします。すすいだら、ほこりのない場所で、清潔な未使用のタオルの上で自然乾燥させます。ふきんで拭いてはいけません。
- 追加の予防として、少なくとも1日に1回は消毒します。AAPは、生後2か月未満の赤ちゃん、早産で生まれた赤ちゃん、免疫が弱い赤ちゃんでは、とくに重要だとしています。煮沸する場合は、分解した対応パーツが浸かるまで水を入れ、沸騰させて5分間煮ます。消毒の前には、必ず洗浄してください。
- チューブは通常は母乳に触れないので、定期的な洗浄は不要です。内側に母乳やカビがついている場合は、捨ててください。
搾乳量が減ったとき
搾乳量が落ちることはよくあり、一時的なことも多いものです。母乳の出が少ないときのAAPの5つのステップは、まず赤ちゃんのかかりつけ医に診てもらうことから始まります。かかりつけ医は赤ちゃんの成長を確認し、吸いつき方や抱き方も見てくれます。認定ラクテーション・コンサルタントに評価してもらうこともできます。次に搾乳器自体(フランジの合い具合、バルブの劣化、搾乳器の種類)を確認します。ミルクを足している場合は母乳を先に与えます。水分、食事、睡眠、ストレス対策でご自身をいたわり、甲状腺の問題、感染症、月経の再開といったほかの健康上の要因も考えてみてください。AAPは、特別なコツや商品は必要なく、市販の特定の食品やサプリメントも不要だとしています。ここで記録が役立ちます。受診の際は、1週間分の搾乳記録と、赤ちゃんのおむつや体重の記録を持っていきましょう。
連絡が必要なとき
赤ちゃんの体重が増えない、おしっこのおむつが予想より少ない、授乳が難しい場合や、ひどい乳房の痛み、硬くて熱い、または赤くなった部分、発熱がある場合、母乳の量で悩んでいる場合は、小児科医またはラクテーション・コンサルタントに連絡してください。データの見せ方は、小児科に持っていく育児記録のまとめ方をご覧ください。このウェブサイトとNightfeedは、医学的助言ではありません。
よくある質問
搾乳は1日に何回すればよいですか。
AAPは1日の搾乳回数の具体的な数字を示していません。仕事中の搾乳については、1回につき少なくとも10分とし、1日に1~3回の短い休憩に触れています。赤ちゃんが普段飲む時間に搾乳するのが一般的な方法です。ご自身の状況については、小児科医やラクテーション・コンサルタントに相談してください。
1回の搾乳は何分すればよいですか。
AAPは、仕事中は乳汁の流れが早く止まったとしても、1回につき少なくとも10分としています。
搾乳した母乳は室温でどのくらい置けますか。
AAPによると、25℃(77°F)までなら4時間までが最適です。非常に清潔に搾乳した場合は6~8時間も可能ですが、できるだけ早く冷やすのが最善です。
母乳は冷蔵・冷凍でどのくらいもちますか。
AAPによると、4℃(39°F)以下の冷蔵庫で4日まで、冷蔵庫内の扉が別になった冷凍室で9か月まで、チェスト型や業務用の大型冷凍庫で12か月までです。
搾乳器はどう洗えばよいですか。
まず手を洗い、使うたびに分解して、専用のたらいでパーツを洗い、清潔なタオルの上で自然乾燥させます。AAPは、とくに生後2か月未満の赤ちゃんの場合、少なくとも1日に1回の消毒を勧めています。

